2015年10月6日火曜日

『雪華図説』の研究 04 模写図と顕微鏡写真と比較 (第10図から第13図)

『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第十図
第十図
  第十図は羊歯状結晶の一例で、主な枝の先が特に著しく伸び出てゐるものである。同図(A)はその点はよく捕へてあるが、中央部の構造は違つてゐる。同図(B)の結晶を一寸見ると(A)のやうな形に見えることは吾々も経験してゐることで、(A)図のやうな放射構造のものは天然にはないだらうと思ふ。


『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第十一図
第十一図
  第十一図は此の羊歯状よりも一層複雑な構造のもので、小枝から更に第二段の小枝が出てゐる場合である。(A)の模写図にその特徴がよく描いてあるが、小枝の方向が少しちがつてゐる。之は図が描きにくいので少し曲げたものであらう。第九、十、十一図の各顕微鏡写真は其の他の多くの写真と同様に、十勝岳で撮影したもので、此のやうな繊細を極めた構造の結晶は外国でも余り撮られてゐない。


『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第十二図
第十二図
  第十二図は再び角板に戻つて、六角板の各端から簡単な枝の出たものが示してある。即ち第三図の結晶が更に進んだもので、上空で六角板の出来るやうな状態があつて、其処で出来た角板が落下の途中で、枝状発達をするやうな気象条件の層を通つてゐる間に、その端から(B)図のやうな枝が出たものである。(A)の模写図は、その枝がまだ短い時のものを示してゐるのであらう。


『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第十三図
第十三図
  第十三図は、此の角板についてゐる枝が樹枝状発達をした例である。即ち地表に近い水蒸気の多い層が、前の場合よりも厚く、且つ水蒸気の量も多い時には此の図のやうな結晶が出来るのである。但し此の場合の枝はまだ十分に羊歯状といふ迄には発達してゐないのであるが、その点も(A)の模写図に可成りよく表現してある。


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